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第10話 決着の月曜日

last update 最終更新日: 2025-11-17 15:00:00

「じゃあ、鍵閉めて、気をつけて行けよ」と、

頭をポンポンされる。

「うん、行ってらっしゃい」

「行って来ます」

チュッと軽くキスをする。

「気をつけてね」と手を振る。

陸人さんは、社長さんだから毎朝、迎えの車が来るようだ。

──あれ? そう言えば何の会社? 美緒って何の会社に勤めてたっけ?

あっ、又イヤな名前を思い出してしまった……

今夜ゆっくり陸人さんに教えてもらおう。

私は、今日、山下さんの言う通りに、午後からの出勤にした。

卓人が会社側から事情を聞かれて自宅謹慎になるまで、顔を合わせることは出来ないからだ。

山下さんから、

〈おはようございます! 今日は、午後から出勤ですよね?〉と確認メッセージが届いた。

〈おはようございます。はい〉と返すと、

〈お昼までには、郵便が届くはずなので、しばらくそこで我慢していてくださいね〉と……

〈分かりました〉

お昼まで時間が出来たので、洗濯機を回して、

晩ご飯も作っておくことにした。

陸人さんに、

〈洗濯しちゃったから、クリーニング屋さん、断っておいてね〉と送ると、

〈ありがとう〜〉と、返って来た。

そして、私はふと思った。

〈どこに干すの?〉と聞くと、

〈ベランダには、干せないから乾燥機まで掛けるか浴室乾燥〉と返って来た。

「やっぱ、そうなんだ。高層階だからベランダのない階もあるものね」

〈今日は、遅くなる日?〉と聞くと、

〈いや、今日は、そんなに遅くならないと思う〉

〈分かった! 私もなるべく早く帰るね。晩ご飯作っておくから、要らなきゃ明日でも良いよ〉

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